断熱等性能等級「等級5」、一次エネルギー消費量等級「等級6」新設
国土交通省と消費者庁は2021年12月1日、住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく住宅性能表示制度について、表示基準の一部改正を官報に告示しました
改正される内容は断熱等性能等級「等級5」一次エネルギー消費量等級「等級6」が新設されます。
現在の最高等級は断熱等性能等級の「等級4」で、一次エネルギー消費量等級の「等級5」ですが1ランク高い性能の投球が新設されるようになります。
改正基準の施行は来年2022年4月1日の予定です。
背景と性能
2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現に向けて、住宅の省エネルギー性能を一層向上させる必要があるとされていました。
特に日本の住宅は世界的に見ても住宅の省エネ性能は低い基準でした。
今回改正される住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく住宅性能表示制度の新たな改正は今年9月に開催された国交省の「長期優良住宅認定基準の見直しに関する検討会」で改正案が出され、その後、国土交通省、経済産業省、環境省の3省による「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」が8月に発表したとりまとめも踏まえて決まったものです。
とりまとめでは、住宅性能表示制度の断熱等性能等級と一次エネルギー消費量等級について、「ZEH基準の水準の省エネ性能に相当する上位等級を設定すること」としていました。
告示で評価方法基準の一部が改正され、断熱等性能等級5については地域区分ごとの外皮平均熱貫流率と冷房期の平均日射熱取得率の提示がありました。
東京などの5地域ではUA値0.6、ηAC値3.0という性能が示されました。
一次エネルギー消費量等級6に関しては、基準一次エネルギー消費量設計一次エネルギー消費量の割合が0.8以下と示されています。
どちらも現行より1ランク上の性能が求められました。
今回新たに新設された断熱等性能等級5、一次エネルギー消費量等級6は平たくいうと現在のZEH水準の等級です。
また現行では評価について断熱等性能等級と一次エネルギー消費量等級のいずれか一方を選択することができていたのが、改正後は断熱等性能等級及び一次エネルギー消費量等級の両方を評価取得必須項目となりました
また省エネ性能ではないですが住宅性能表示の耐震等級等においてCLTパネル工法の評価方法等について改正されています。
日本の省エネ性能は世界水準から大きく遅れている
日本の住宅断熱性能は先進国で断トツ最低レベルです。専門家の中では常識なのに、一般の人にはあまり知られていません
実は、先進国はおろか、今や中国や韓国よりも大幅に性能が劣っています。
その結果として、冷暖房光熱費を無駄にしていて多くの人々が健康を害し、快適な暮らしを送ることができなくなっています。
その理由は単純明快で日本だけ「省エネ基準への適合」が義務化されていないからです。
ドイツをはじめ、日本以外の先進国では、新築する際には、省エネ基準への適合が義務化されています。それに対して、日本ではいまだに基準への適合が義務付けられていません。省エネ基準を下回る低性能の住宅が今でも、違法ではなくごく当たり前に新築されています。
実は「2020年までに省エネ基準への適合を義務化する」と閣議決定までされていました。建築物省エネ法という新法もできて、建物の用途や規模によって、段階的に義務化されていくことになっていました。すでに実際、オフィスビル等の非住宅建築物は、順次、義務対象が拡大されています。ところが住宅はなぜか義務化は見送られています。省エネ基準へ対応できない住宅事業者が多く、業界が混乱しかねないというのがその理由だったようです。他国よりもはるかに緩い基準に対応できない住宅事業者が多い国、というのが日本の実情です。
しかし最近になって、住宅の省エネ性能の向上に向けた動きが活発になり、各種制度が今後変更されていくことが決まりつつあります。
補助金とセットでないと省エネ性能が向上しないのでは?
住宅業界は経営面も性能面も2局化しています。
省エネ基準への適合を義務化するのに多くの住宅事業者が対応するためには人材不足や資金面の問題も絡んでいます。
住宅の断熱性能の向上はエネルギー消費量を削減するだけでなく日本国民の健康面でも大きな影響があり高機密・高断熱の住宅に日本の住宅が向かえば医療費の削減に繋がる可能性も高いです。
なかなか進まない日本の住宅の性能向上に補助金などの政策で一気に後押ししてもらいたいですが近々発表される「こどもみらい住宅支援事業」もそれほど高くない省エネ性能を求めてなくかつ利用できる人に年齢制限を設け幅広く普及をさせるには不十分に感じます。
強く推し進める政策の本気度が上がればいいなと思いました。
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