建物や生命を守るのに住宅の耐震性能が重要です。
住宅の耐震性能は、住宅性能表示という制度の中に耐震等級があります。阪神淡路の震災を教訓に建物が強化され2000年に建築基準法が改正され、「2000年基準」とも言われています。
耐震等級1は建築基準法通りに作った強さで、
耐震等級2は建築基準法の1.25倍の耐震性能がある建物で、
耐震等級3は建築基準法の1.5倍の耐震性能があります。
住宅性能表示の基準では耐震等級3が一番強いのですが、近年で一番被害が出た熊本地震では耐震等級を高くしても倒壊している建物があります。
熊本地震では震度7の揺れが2回きたからです。1回目の震度7で建物がダメージをうけ、2回目の震度7で耐えれず倒壊しています。新しい耐震基準の建物で「2000基準」の建物も倒壊しています。
私の地元の工務店さんの最新のモデルハウスで、デザイン性が高く若い人に人気のある会社があるのですが、間取りをよくよく見ると、非常に耐震性では危険な建物だと思いました。
木造住宅は基本的には構造計算は不要です。
2000年基準の耐震性能でも怪しいのが現実ですが、耐震性よりデザイン重視の工務店さんは若い人に人気があります。私の地元でデザイン性を売りにしている工務店さんだけでなく、住宅雑誌を見てても構造的に怖いなぁと思う建物がたくさん紹介されています。
正直なとこと熊本の地震で倒壊している「2000年基準」の建物でも耐震性は怪しいのですが、それ以前に耐震性をあまり重視していない建物は増えていると思います。
「プロが作った建物なので安全」とか、「設計の数字上で耐震性能が出ているからといって安心」できないのが現実です。
住宅は長期の住宅ローンを組む方が多く、地震保険に加入しても建物が全壊した状態で半額しか金額面でサポートを受けれず、撤去費用や当面の暮らしで消えてしまうくらいしか保険金が出ずに、さらに住宅ローンの支払いは残ります。
デザイン性も重要ですが、長く過ごす住宅ですので、熊本地震のような繰り返しの地震にも耐える建物の考え方を今回ご紹介します。
最新の新耐震基準の建物でも熊本地震では倒壊しています。
熊本地震では1週間以内の震度7が2回きました。
1回目の震度7で建物にダメージが出て、1回目はなんとか倒壊しなかった建物が2回目に倒壊した建物がたくさんありました。
いくつかの原因がありますが、主には「基礎と躯体のつなぎ目の問題」と、「揺れで壊れた耐力壁の問題」があります。
繰り返しの地震で崩壊した原因は
「基礎と躯体のつなぎ目の問題」と、「揺れで壊れた耐力壁の問題」
基礎と躯体の接合の問題
コンクリートの基礎と、上部の躯体の接合の問題ですが、阪神淡路の地震で、上下動の売れで建物が引き抜かれる現象が数々見られ、コンクリートと上部の連結をアンカーボルトだけでなく、ホールダウン金物と呼ばれる金物で柱と強固に接続するようになりました。
それでも熊本地震では倒壊している建物がたくさんあります。激しい揺れで引き抜かれたり、ボルトが破損しているものも見られました。
アンカーボルトやホールダウン金物の数や有効な設置位置が重要です。
耐力壁が壊れる問題
阪神淡路の地震以降の「2000年基準」の耐震性能は、基礎と構造の躯体の結合だけでなく、建物の揺れた時のバランスを見て、筋交や構造用合板などの耐力壁をバランス良く配置するようになっています。
一般的に間取りは南に開口部を多くとって壁が少なくなったり、西側は西日が必要ないので壁が多くなりがちなのを、建物の四隅を中心にバランスよく耐力壁を配置して強化し、建物が揺れても重心ができるだけ真ん中になるように、重心と剛心を極力同じになるように調整します。
私も建物のバランスを配慮して設計すれば、揺れが収まった時に揺れる前の状態に戻ると思っていました。しかし実際には熊本地震では「2000年基準」の耐震性能でも倒壊しています。
「2000年基準」の耐力壁の配置は、耐力壁をバランスよく配置させるだけでは倒壊してしまっているのが現状です。基礎と躯体の接合の問題と、耐力壁をバランスよく配置しても倒壊してしまう問題は、2000年基準の耐震性能で解決できていません。
1階が崩壊して2階はあまり崩壊していない建物がたくさんありました。熊本地震で倒壊している現場の写真を見ると、木造・鉄骨関係なく1階が倒壊しています。原因の一つとして、1階の耐力壁が破壊して、基礎と躯体の接合に問題が起きています。
耐力壁の破壊にはいくつかの原因があります。
耐力壁としては、柱と柱を斜めの材をつなぐ「筋交」と呼ばれる耐力壁と、柱と柱を面で支える「構造用合板」の耐力壁があります。
筋交は端部が外れる問題と、筋交が弓なりにしなって中央部が破壊される現象があります。
建築基準法を超える筋交の量が必要だったり、しならないように間柱にも接合したり、石膏ボードを止めるビスを増やして変更をある程度抑える方法があります。
構造用合板の耐力壁の方は、柱と柱を構造用合板で繋いで、床も水平剛性を高めるために24mm以上の合板を使い、建物をモノコック構造にすれば面で支えるので歪みにくく強くなると今までは思ってました。
しかし構造用合板を柱に釘で強く打ちすぎて、地震の揺れで柱に釘が残ったまま構造用合板が外れる現象や、釘が抜けたり折れたりして破壊するケースが怒っています。
構造用合板の耐力壁でも熊本地震のように繰り返しの地震になると、1回目の震度7では少し遊びがあるので倒壊しませんでしたが、1回目の地震で釘が少しゆるくぬけ、2回目の震度7で完全に抜けて倒壊している建物も見られています。
柱と構造用合板を釘でモノコック構造にすれば強いというわけではないことが実証されています。
1階が倒壊してしまうのを防ぐには
1階が倒壊して、2階があまり崩れないのは、1階はLDKなどの大空間をとり、柱の感覚が広いのに対して、2階個室が中心で柱や壁が多いからです。2階の方が1階に比べて荷重が小さく、柱や耐力壁を撮りやすいので、構造的には安定しているからです。
1階が崩れて2階はそのままの倒壊の建物が多いのはそのためです。
この現象で倒壊を防ぐには、1階の柱の位置と2階の柱の位置を可能な限り揃えるのが重要です。
さらに熊本地震で分かったこととして、1階の壁の位置と2階の壁の位置を極力揃えることはさらに重要です。
ある程度上下階の柱の位置を揃える設計者は多いですが、壁の位置を揃える設計者は少ないのが現状です。
現在の建築基準法では耐力壁を設ける場所の規定はありません。そもそも木造住宅では構造計算が不要なくらいです。
数字上の耐震性能を上げるのに、壁の位置は関係なく、壁に耐力壁を設けるほど強くなるといった計算結果で耐震等級が決まります。しかしそれでは現実の地震では倒壊する可能性が高いのが熊本の地震を見ていると明らかです。
壁の位置が上下階で揃っていると、上部の揺れを下の階の壁が支えてくれますが、壁の位置が揃っていないと上部の壁の揺れを受け止めることができずに揺れが大きくなります。
1階の壁と2階の壁を揃えることを「直下率」と言いますが、特に直下率の規定は耐震等級で強く要求されていません。
熊本の地震で分かったこととして、柱の上下階の位置と、壁の位置があまり揃っていない直下率が低い建物が倒壊しているのはデータを見ても解っています。
ただでさえ1階は広いLDKなどで壁が少ないのに、さらに体力壁の上下階の位置が揃っていない直下率の低い建物は1階から倒壊しやすいのは明らかな事実です。
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