熊本地震で震度7の揺れが1週間以内に2回きて、1回目の震度7で建物がダメージをうけ、2回目の震度7で耐えれず倒壊して、耐震等級の高い新耐震基準の建物でも倒壊してしまいました。
実際に熊本地震以降は繰り返しの地震の対策として、制振ダンパーが普及しています。しかし制振ダンパーを採用することで耐震性能が落ちる可能性があります。制振ダンパーは地震の揺れを揺れを吸収して、繰り返しの地震にも強いのですが、制振ダンパーを採用することによって、かえって耐震性能が低くなる場合があります。
実際に法隆寺は日本最古の木造建築物で有名で1300年を超えて木造の構造で現存しています。歴史的な建築物で地震に耐えている建物が数々あり、制振ダンパーがない建物でも倒壊していない建物はたくさんあります。
近年で急激に普及している制振ダンパーは繰り返しの地震に対して本当に有効なのか?をご紹介します。また制振ダンパーを採用することによってかえって耐震性能が悪くなる事例もご紹介します。
耐震と制振
住宅の地震対策として、「耐震」と「制振」があります。
「耐震」は揺れに耐える考え方で、「制振」は揺れを吸収する考え方です。
耐震性能を高くするには、筋交や構造用合板などの耐力壁を有効な場所に数多く設けて、揺れに対して強い構造体を作ると耐震性能は高くなります。ただここには落とし穴があって、強いものは限界を超えると一気に破壊されます。イメージ的には割り箸を曲げようとすると、ある程度は木の繊維が折れるのを防いでいますが、極端な力が一気にかかると限界になった途端一気に折れます。圧縮や引っ張りや曲げに対して、座屈や破断してしまします。いったん強いものが壊れてしまうと、元の形に復元んできません。強いものは粘りがなく破壊されてしまいます。
逆に制振の考え方は揺れを吸収するといった考え方で、イメージとしては鉄の棒を曲げるイメージで、力をかけると鉄の棒は曲がりますが、なかなか折れません。割り箸は一気に折れて破壊しますが、鉄の棒は曲がった状態になって破壊はされません。制振は力が熱に変わり吸収され破壊を防ぎます。制振ダンパーは鉄の棒と違って、揺れを吸収した後、元の形状に戻るようにできています。
元の状態に戻る制振ダンパーの方が、強く踏ん張る耐震より良さそうに思いますが、制震ダンパーは揺れを吸収する力があるだけで、地震に耐える力がありません。まして実際の地震は三次元に予測できない揺れが建物に加わるので、うまく揺れが吸収できない可能性があります。うまく揺れが吸収できないと、建物は崩壊します。
つまり制振ダンパーは耐震性能が高い建物の最終的な崩壊を防ぐために揺れを吸収して建物を守るのが正しい使い方です。
耐震性能がない高い建物に制振ダンパーを使っても全く効果がありません。無闇に耐力壁を入れても耐震性が高くならず、効果的な適切な位置に耐力壁を設けた上で、建物が破壊される限界を引き上げるのに補助的に揺れを吸収する制振ダンパーを採用するのが望ましいです。
制振ダンパーの2つのタイプ
制振ダンパーは「仕口タイプ」と「筋交タイプ」があります。
「仕口タイプ」は柱と柱の間に、柱とはりや、柱と土台に四箇所短いダンパーと取り付ける制振ダンパーです。メリットは間取りの自由度が高く、施工性が良い上に値段が安いのが特徴ですが、デメリットは筋交タイプより制振性や耐久性が弱いのが一般的です。
それに対して「筋交タイプ」は筋交の代わりに制振装置を取り付ける制振ダンパーです。メリットは仕口タイプより制振性や耐久性が高いのが特徴です。デメリットとしては間取りの制約があったり、価格が高いのがデメリットです。
多くの住宅会社が効果が高い筋交タイプの制振ダンパーを採用している会社が多いのですが、注意することとして、筋交タイプの制振ダンパーを採用することで、逆に耐震性が低くなり建物が崩壊する可能性があるからです。
制振ダンパーが効果的でないケース
先ほど制震ダンパーには揺れを吸収する力があるだけで、地震に耐える力がないことをご紹介しました。つまり耐震性が低い建物に制振ダンパーを取り付けても効果がないということです。
その中でも特に注意が必要なのは小さな建物で制振ダンパーを取り付ける場合です。小さな建物ほど間取りで部屋の数が少なく、壁が少なくなりがちです。壁が少ない建物に制振ダンパーを取り付けると、本来は構造的に踏ん張る耐力壁を入れたい場所が制振ダンパーになってしまい、揺れに対して逆に弱くなってしまいます。
またある程度大きな建物でも本来は地震エネルギーが集まりそうな場所に制振ダンパーを取り付けて揺れを吸収したいところですが、周りに窓などの開口部があると、制振ダンパーより耐力壁を入れた方が建物が強くなることがあります。
耐震性能と制振性能のある制振ダンパー
小さな建物や、大きな建物でも有効的に耐震性を高めながらかつ制振ダンパーで揺れを吸収する方法として、制振ダンパーが耐力壁としても機能できる製品を選ぶ方法があります。
国土交通大臣認定の耐震性能がある制振ダンパーで、地震時の建物を支える耐力壁の強さを表す壁倍率は、壁倍率3.2倍の耐震性があり、耐震性能と制振性能の両方の機能があります。震度4程度までは壁倍率3.2倍として耐震壁となり、それ以上の強い揺れは制振ダンパーとして揺れを吸収します。耐力壁と制振ダンパーの両方の性能がある国土交通省認定の制振ダンパーのために、小さな建物でも耐力壁として確保しながら揺れを吸収する制振ダンパーとして機能したり、大きめの建物でも揺れが大きくなりそうな壁の位置に耐力壁としてある程度までは耐え、大きな揺れは吸収する性能があります。耐力壁と制振ダンパーを兼ねているために、数多くの制振ダンパーを採用でき、地震に強い建物になります。例えば30坪以下の小さな平家でも8基制振ダンパーを採用しています。小さな平家で8基の制振ダンパーは制振ダンパーを採用している会社の中では多い方です。これは耐力壁と制振ダンパーを兼ねているからたくさん採用でき地震に強く建物を作ることができます。一般的によくある耐力壁の性能がない制振ダンパーだと30坪以下の小さな平家に8基制振ダンパーを採用すると逆に耐震性が劣ります。逆に40坪を超え50坪以下の2階建てだと、1階に8基、2階に4基の合計12基の制振ダンパーを採用しています。このくらいの二階建てだと1階の面積は30坪ないのが普通ですが、1階に8基制振ダンパーを採用している住宅会社も少ないと思います。2階建ての場合はほとんど1階が地震で崩壊する場合が多いので1階を特に補強しています。
地震に対して強い建物をご提供しているので、制振ダンパーを採用した場合、私の勤める会社では、条件はありますが、お引き渡しから5年間は、建物価格または2000万円までのいづれか低い方の建て替え保証と、残存物の解体や片付けに使える費用として、建て替え保証とは別に最大100万円分までサポートしています。さらに一般的な国がやってる地震保険に入る方は万が一地震の被災に遭うと、国の地震保険は建て替え費用に使う必要がないため、被災後の生活資金や、家財などの再調達費用などに当てることができます。その上別途、お引き渡しから最大20年の長期のサポートとして最大1000万円の大規模半壊の建て替えの一部の保証もついています。大手保険会社にサポートしてもらって成り立っている地震時の建て替え保証ですが、逆に言い換えると、大手保険会社からするとよくよく検討した結果、私の会社が採用している制振ダンパーは耐力壁と制振機能が使えて、倒壊するリスクがほぼないと保険会社が判断して商品化されていると言えます。
ちなみに制振ダンパー8基だと税込390,500円で販売していて、建て替え保証がついています。先月1月は私は3件契約させていただきましたが、3件とも制振ダンパーを採用されました。とても人気のあるオプションです。
ちょっと宣伝になってしまいましたが、制振ダンパーを採用する場合、耐力壁として国土交通大臣の認定を受けている制振ダンパーなのかを確認したり、耐力壁とかねることができない場合は、特に小さな建物ほど、制振ダンパーより耐力壁を強化した方が耐震性能が高くなります。
耐力壁を適切に設けた上で補助的に制振ダンパーを採用することをお勧めします。
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