【人工地震】ありえる?!

ニュース・税制・法令

 

地震が発生すると陰謀論がいつも浮上します。

2023年2月6日に発生したトルコ・シリア大地震ではトルコで5万500人、隣国シリアでおよそ6000人のあわせて5万6000人以上が死亡した地震では、アメリカの研究施設・高周波活性オーロラ調査プログラムが嵐や熱波を操作操作しているとの陰謀論が一番有名です。

地震の被害を受けたトルコ・カフラマンマラシュで、倒壊した建物で捜索活動を続ける人々(2023年2月7日撮影)。(c)Adem ALTAN / AFP

2023年5月の石川県の地震でも早速の陰謀論が浮上しています。

地震の波形が人口的に起こした地震の波形だとする説と、岸田総理をはじめとした日本の閣僚が次々と海外に外遊に出ている間に日本で混乱を起こすための地震であることが陰謀論の原因になっています。

そこで今回は人工で起こす地震と自然の地震を解説します。

能登半島地震は人工地震

石川県能登半島の地震が人工地震であるのではと情報が拡散しているのは、地震の揺れの波形のP波とS波の波形のうち、P波がなくいきなり大きな振動を起こしている波形なので自然地震ではなく、人口的な地震で自然の地震ではないのではないか?と情報が拡散しています。

熊本地震の時もP波がないと話題になりました。

まずはSNSで拡散されている地震によって震源から放射される地震波のP波とS波から解説します。

震源から離れた位置で地震波を観測すると最初に観測されるのがPrimary Waveと呼ばれる最初の波のP波で、P波が継続しつつある中で続いて観測されるのがSecondary Waveと呼ばれる第二の波のS波です。

P波とS波はPrimary WaveとSecondary Waveの頭文字をとって名づけられていて、それぞれの地震波の伝播速度の違いに特徴があります。

地震動を感じた時、最初にカタカタと揺れる震動あるいは突き上げるような震動と表現されるのがP波で、P波を感じてからしばらくの後にゆさゆさと大きく横方向に揺れるのがS波です。P波を縦波といい、S波を横波とも呼びますが、縦波と横波という呼び方は人が地震動を縦に感じるか横に感じるかという揺れの方向を意味しています。P波は疎密波とS波はねじれ波とも呼ばれることもあります。それぞれの地震波の伝播媒体の運動を現す物理的な表現です。

P波とS波の伝播速度は伝播媒体つまり岩盤や地盤の弾性率や剛性率などによって決まり、一般に地殻内では硬くて亀裂の少ない地下深くの岩盤ほど伝播速度は大きくなります。ごく浅い部分を除いた地殻内でのP波の伝播速度は毎秒6~7キロメートル程度S波の伝播速度は毎秒3.5~4.5キロメートル程度です。どのような条件であっても必ずP波の速度がS波の速度よりも速いことから、震源から最初に到達する波は常にP波です。

人工地震の波形

かって北朝鮮は平成28年1月6日に水爆実験を実施したと発表した際にも日本各地の地震計が反応して、いきなり大きな揺れから始まる波形であったことから、気象庁が自然の地震の波形ではなく、人口的に起こした自然ではない地震であることを記者会見していました。

2016年9月に北朝鮮が行った核実験の際の加速度波形でも最初から大きな振幅の波形となっています。自然の地震はP波が小さくその後で大きなS波がきます。何度も北朝鮮は核実験を同じ場所で行っていますが震源深さが0kmであることがわかっています。震源深さが0kmですと加速度波形で自然地震の波形と形が違ってきても当然です。

地震の震源深さ

地震の際の震源の深さは、平均海水面の標高0mからの深さを指します。また、震源とは、地震の発生の際に、地球内部の岩石の破壊が開始した地点のことで、現在、地震発生時に気象庁から即時配信している地震情報については、震源の深さを、1km単位で計算した結果を四捨五入して10km単位で発表しています。一般に地下10km ~50km程度の深さで起こることが多く、60~70キロメートルより深い地震をやや深発地震300キロメートルより深い地震を深発地震と呼んでいます。日本で最も深いとされている地震は、2015年5月30日の小笠原諸島西方沖地震の余震で、深さは698kmを記録しているそうです。地域によっては「この深さでよく地震が起こる」といった傾向があることに気付きます。たとえば、内陸部で起こる地震は地表近く~30kmくらいで起こることが多く、海底を震源とする地震は比較的深い場所で起こることが多いです。震度は地盤の状態も深く関係するので一概には言えませんが、同じマグニチュードの地震なら、深い地震の方が地表から遠くなる分、震度が小さくなる傾向にあります。首都直下型地震の被害は大きいとされていますが、震源の深さが浅いと言われているので、被害が大きいとされている理由です。

石川県の地震は人工地震だったのか?

今回の石川県能登半島の地震は震源の深さが約10kmと発表されています。P波がないので人工地震なのではないかと陰謀論がSNSで話題になっていました。

震源深さが短いほどP波もS波も伝わるまでの時間が短くなります、SNSで拡散されている今回の能登半島の地震の加速度波形にP波がないので人口的に起こされた自然ではない地震とSNSで話題になりました。

グラフではP波とS波が一体化しているように見えますが、これは時間軸の問題で時間を引き延ばすと印象はかなり変わります。

時間軸を300sから120sまで引き伸ばしてみると、P波、S波がしっかり分かれて観測されています。明らかに人工的に起こされた地震ではなく自然の地震であることがわかります。

金黒
金黒

期間軸を引き伸ばした波形は明らかに自然の地震です。

また震源深さ約10kmというのも人工的に能登半島で地下深くまで掘って核爆発させたというのには無理があります。日本で最も深い穴は新潟県で資源探査のために掘られたもので深さはおよそ6.3kmで、海底の探査を行う地球深部探査船「ちきゅう」が掘削するのも3km程度です。

世界を見てもロシアやカタールで掘られた12キロが最大級だと言われていています。10km近く穴を掘ろうと思うと予算も数百億円はかかる言われていて、能登半島でそんなに深い穴を掘っていたら目立っていたと思われます。

今回の能登半島の地震について複数の専門家が提示するのが、地下深くから上昇した水などの流体が、地震を引き起こす断層面に入り込み、断層がすべりやすくなっている可能性です。

太平洋プレートの沈み込みで水が地下深くに取り込まれ、そこからしみ出した水が上昇して地盤を押して膨張させたり、断層のすき間に入り込んだりして、繰り返し地震を起こしているとみられています。能登半島先端部では2020年12月から地震活動が活発化していて、能登半島の地殻変動は地震は地震につながり長い間だらだら続き、ときどき大きなものが起きるとされています。このような群発地震は短い期間で終わるものが多いですが、1965年から長野県で続いた『松代地震』など、5年半続いた例はあることを考えると、能登地方では今後も、M5~6程度の地震が年単位で続く可能性もあるとのことで注意が必要です。

YouTube版はコチラ

コメント

タイトルとURLをコピーしました