最近、「東京では家賃がかなり上がっている」という話を聞くことが増えました。
ただ、地方に住んでいる方の中には、
「それは東京だけの話ではないか」
「地方は人口が減っているから、家賃はいずれ下がるのではないか」
そう考えている方も多いと思います。
実際、私も最近、住まいに関わる仕事をしている人に、この話を聞いてみました。
金利が上がっていることは知っていても、それが自分の住んでいる賃貸住宅の家賃につながるとは、あまり感じていないようでした。
住宅業界の人でも、金利上昇と家賃上昇は、すぐには結びつかないようです。
おそらく多くの方も、金利が上がると聞けば、「これから住宅ローンを借りる人は大変だ」とは思っても、「自分が今払っている家賃も上がるかもしれない」とまでは、あまり考えていないのではないでしょうか。
しかし、最近のデータを見ると、家賃上昇は東京だけの話ではなくなりつつあります。
札幌、仙台、名古屋、京都、大阪、神戸、広島、福岡など、地方の主要都市でも、新しく募集される家賃の上昇が広がっています。
上昇率はまだ小さいものの、四国でも同じ方向の変化が見られます。
今回は、なぜ人口が減っている地方でも家賃が上がるのか。
そして、金利上昇が賃貸に住む人にも関係してくる
可能性について考えます
【画面:内閣府「賃貸市場の動向と近年の家賃上昇に伴う家計負担について」】
まず、内閣府が公表した資料を見てみます。
この資料では、東京都を中心とした賃貸市場の変化が分析されています。
内閣府によると、新設住宅着工戸数は長期的に減少しています。
住宅価格の高騰や住宅ローン金利の上昇によって、家を買うことへの負担感が強くなり、その代わりに賃貸住宅への需要が高まっていると分析されています。
家が高くなった。
住宅ローン金利も上がった。
そのため、家を買うのを見送り、賃貸住宅に住み続ける人が増える。
こうした流れです。
内閣府の資料でもう一つ重要なのが、募集家賃と、現在住んでいる人が払っている家賃は、同じ動きをしないという点です。
募集家賃とは、これから新しく部屋を借りる人に提示される家賃です。
一方、消費者物価指数などに表れる家賃には、何年も前から住み続け、家賃が変わっていない人も含まれています。
そのため、まず新しく募集される家賃が上がり、住み替えや契約更新を通じて、時間をかけて既存の入居者にも影響が広がっていきます。
内閣府の試算では、2024年度と同じ上昇率が続いた場合、東京都の募集家賃は2030年に2020年の約1.3倍になる計算です。
一方、現在の入居者が支払っている家賃に近い指数は、2030年に約1.1倍と試算されています。
もちろん、
これは今の上昇率が続いた場合の機械的な試算であり、必ずそうなるという予測ではありません。
ただ、ここから分かるのは、募集家賃の上昇が先に起き、既存の家賃には遅れて届くということです。
だから、今住んでいる賃貸住宅の家賃がまだ上がっていない人ほど、「家賃は上がっていない」と感じやすいのだと思います。
しかし、次に引っ越そうと思ったときには、同じような広さや立地の物件が以前より高くなっている。
あるいは、退去者が出た後の部屋だけ、新しい家賃で募集されている。
このような形で、最初に変化が現れます。
【画面:東京から地方主要都市へ広がる地図】
では、これは本当に東京だけの問題なのでしょうか。
募集家賃の調査を見ると、上昇しているのは東京だけではありません。
札幌、仙台、名古屋、京都、大阪、神戸、広島、福岡などでも、前年より募集家賃が上がる面積帯が広がっています
特にカップル向けやファミリー向けの住宅では、多くの地域で上昇が確認されています。
もちろん、札幌や仙台、広島の家賃が、東京と同じ金額になったという話ではありません。
絶対的な家賃水準には、まだ大きな差があります。
ただ、これまで東京や大阪、福岡で目立っていた家賃上昇と同じ方向の動きが、地方の主要都市にも広がっていることは重要だと思います。
【画面:四国4県の地図】
では、四国はどうでしょうか。
LIFULL HOME’Sの住まいインデックスでは、
築10年、専有面積70平方メートルの標準的な賃貸マンションを想定して、地域ごとの推計賃料を比較しています。
これは、すべての既存物件の家賃を集計した数字ではなく、物件の築年数や広さなどを調整した参考値です。
そのため、数字は慎重に見る必要があります。
ただ、四国でも、標準的な賃貸マンションの推計賃料は、3年前と比べて4県すべてで上昇しています。
四国の中では高知県の上昇率が比較的大きく、香川県、愛媛県、徳島県でも上昇しています。
香川県では、直近3年間でおよそ2%前後の上昇が確認されています。
東京や大阪、福岡などと比べれば、四国の上昇率はまだ大きくありません。
ただ私は、上昇率の大きさだけではなく、人口が減っている地方でも、家賃が下がらず上昇に転じていること自体が重要だと思います。
特に地方では、県全体の平均を見るだけでは、実態が分かりにくくなっています。
郊外の築年数が古い物件は空室が増える。一方で、県庁所在地や便利な地域にある、築浅で設備の整った物件には需要が集まる。
同じ県の中でも、選ばれる住宅と選ばれない住宅の差が広がっているからです。
空き家が増えていることと、住みたい賃貸住宅が余っていることは、同じではありません。
築年数の古い空き家が増えても、若い世帯が希望する築浅の1LDKや2LDK、駐車場が確保された住宅、断熱性能や水回りの設備の比較的新しい賃貸物件は供給が足りません。
地方では住宅そのものは余る。
しかし、今の人が住みたいと思う住宅は足りない。
この二つが同時に起きる可能性があります。
【画面:需要・供給・オーナー側の3つ】
では、なぜ今、家賃の上昇が地方にも広がっているのでしょうか。
私は、三つの方向から考える必要があると思います。
一つ目は、借りる人側の変化です。
住宅価格と住宅ローン金利が上がれば、家の購入を延期する人が増えます。
本来なら賃貸住宅を出て持ち家に移っていた世帯が、賃貸に長く残ることになります。
特に家族で住める2LDKや3LDKは、単身用ほど供給が多くありません。
購入を見送る世帯が増えれば、こうした広めの物件に需要が集まり、家賃が上がりやすくなります。
二つ目は、住宅を供給する費用の上昇です。
建築資材、住宅設備、運送費、人件費が上がっています。
地方では、職人や現場監督などの人手不足も深刻です。
土地が比較的安い地域でも、建物や設備の価格は全国的に上がります。
新しい賃貸住宅を建てる費用が上がれば、以前と同じ家賃では採算を取りにくくなります。
その結果、新築供給が減るか、供給されても家賃が高くなり、築浅物件の希少性が高まります。
三つ目が、既存オーナーの負担です。
賃貸住宅のオーナーが、アパートローンなどを変動金利で借りていれば、金利上昇によって利息負担が増えます。
さらに、原状回復、エアコンや給湯器の交換、外壁や屋根の修繕、清掃や管理の費用も上がっています。
もちろん、オーナーの負担が増えたからといって、今住んでいる人の家賃を翌月から自由に上げられるわけではありません。
そのため、最初に影響が表れやすいのは、退去後の新規募集やリフォーム後の再募集です。
ここが、金利上昇と家賃上昇がつながって見えにくい理由だと思います。
金利上昇は、住宅購入を見送る人を増やし、賃貸需要を強める可能性があります。
同時に、賃貸住宅を所有し、維持する側の費用も増やします。
ただし、オーナーの費用が上がれば、どの地域でも家賃を上げられるわけではありません。
空室が多く、借り手が少ない地域では、家賃を上げると入居者が決まらなくなります。
最終的には、地域ごとの需要と供給によって決まります。
だから今後は、地方全体の家賃が一律に上がるのではなく、
便利な場所。
比較的新しい物件。
省エネ性能や設備が整った物件。
家族で住める広さの物件。
こうした需要の強い住宅から、家賃が上がるのではないかと思います。
【画面:築古の空き家と、築浅・好立地の賃貸住宅の対比】
ここからは私の考えです。
私は、これから地方で不足するのは、住宅そのものではないと思っています。
人口が減り、空き家はこれからも増えていくと思います。
しかし、便利な場所にあり、比較的新しく、夏や冬も暮らしやすく、
今の生活に合った住宅は、今までのように安く供給できなくなる可能性があります。
人口が減るから、家賃も下がる。
空き家が増えるから、住居費も安くなる。
その考え方には、住宅を新しくつくる費用や、
今ある住宅を維持する費用が上がっているという視点が抜けているように感じます。
金利上昇についても、多くの人は、持ち家を買う人だけの問題だと考えています。
しかし私は、持ち家には比較的早く影響し、賃貸住宅には時間をかけて影響が届くのではないかと考えています。
今の家賃が変わっていないからといって、影響がないとは限りません。
次に引っ越すとき。
契約を更新するとき。
家族が増えて、少し広い部屋を探すとき。
そのときに初めて、以前より家賃が高くなっていることに気づくかもしれません。
地方だから住居費は安い。
賃貸なら金利上昇とは関係がない。
そう単純には言えない時代に、少しずつ入ってきているのではないかと思います。

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