厚生労働省の人口動態統計で最新のデータの2019年の資料によると、住宅内の不慮の事故による死亡者数は1万3800人で、ここ数年高止まりしています。
同じ2019年の交通事故での死亡者数は3215人で、住宅内の不慮の事故嚢胞が交通事故に比べて4倍死者数が多いデータになっています。
交通事故はニュースなどで見聞きしてなんとなくの死亡数はイメージしやすいですが、その4倍の死亡者数が住宅内で起きているイメージはつきにくいと思います。
昨年2021年のコロナ感染による死亡者数は約1万5000人で、住宅内の不慮の事故おによる死亡数に近い人数です。また2011年の大きな津波を襲った東日本大地震の死者数もコロナ感染者での死者数と同じくらいです。
交通事故は自動車の安全性能が高まり年々減少傾向で、コロナ感染による死亡者は今後は減り、東日本大地震のような災害は毎年くるわけではないなか、住宅内での不慮の事故死は毎年あまり変わっていません。
死者数を考えると地震対策と同じくらい、住宅内の不慮の事故死を防ぐ対策も同じように重要です。
東京消防庁がまとめた2019年の救急搬送データからみる日常生活事故の実態によると、都内で救急搬送された14万4767人のうち、5割強の7万4677人が「住居等居住場所」での事故によるものだったデータがあります。
死亡まで至らなかったケースでも、住宅内のヒートショックなどで脳内出血や心筋梗塞、脳梗塞などを発症した場合、その後の生活が不自由なものになる事故も発生していて、
実際私も現在お手伝いさせていただいているお客様も、奥様が浴室でヒートショックによる心筋梗塞で障害が残ってことが原因となり、住宅建築を計画中の方がいらっしゃります。バリアフリーは当然のこと、車椅子で生活できる動線を配慮して計画しています。
今回は住宅内での不慮の事故の多い3つの事例と対策をご紹介します。
住宅内の不慮の事故の死亡者
「溺死及び溺水」5673人
「窒息」の3187人
「転倒・転落・墜落」2394人
ヒートショック
一番多い「溺死及び溺水」の要因の1つに「ヒートショック」があります。暖かな空間から寒い空間に移動した際、急激な温度変化により血圧が乱高下し脳内出血や大動脈解離、心筋梗塞、脳梗塞などを引き起こします。
断熱性の低い住宅の場合、冬場は脱衣所が氷点下近くになることがあり、お風呂のお湯との温度差は40℃くらいの差ができ、体への負担でヒートショックを招き、浴槽内で意識を失ったりして溺死するというのが発生要因の1つです。
国土交通省によると、日本にある住宅の約5000万戸のうち、無断熱の住宅が約1500万戸あり30%を占めています。
私のお客様の例ですと、近くにご家族がいらっしゃり、お風呂で倒れている家族に気がつき死亡まではいたりませんでしたが、体の半分に障害が残ってしまいまいました。まだ50代の方ですが住宅内の温度差の恐ろしさを改めて感じます。
ヒートショックを起こさないためには、住宅を高気密高断熱の省エネ住宅にしたり、住居内の温度を一定に保つ全館空調を採用したり、間取りで洗面脱衣室に行く際に、寒くなりがちな廊下を通らずにLDKなどの普段暮らしていて暖房している場所から、直に洗面脱衣室に行けるようにしたり、LDKなどから洗面脱衣室への動線を可能な限り短くしたり、リフォームなどで間取りで工夫できない場合は、洗面脱衣室も暖房できるような設備を設ける方法もあります。
また夜間のトイレもヒートショックの可能性があるため、寝室からトイレまでの距離も配慮して設計する必要があります。
特に気をつけていただきたいのが、不整脈、高血圧、糖尿病の方は特に注意が必要です。
また生活習慣として、一番風呂や、飲酒直後や食事直後や薬を飲んだ直後の入浴を避けたり、早朝や深夜の入浴を控えたり、42℃異郷の熱い湯に、首まで長くつかるとヒートショックになりやすいので注意してください。
心筋梗塞は30歳代から年齢とともに増加し、60歳代にピークとなります。30代の若い方でも可能性があるため、住宅で改善できるものは早めの対策をしたほうが良いと思います。
窒息
住宅内の不慮の事故死の2番目に多い窒息ですが、乳幼児がおもちゃや電池など誤飲し亡くなるというケースや、高齢者がお餅などを喉煮詰まらせるケースがあります。乳幼児のいらっしゃるご家族は、整理整頓の収納の工夫をしたり、高齢者の場合は食事に気をつけて、事故発生を未然に防ぎます。
転倒・転落・墜落
3番目に多い「転落」についても、子どもや高齢者が多く、子供の場合はベランダの乗り越えなどを防ぐた、乗り越えにくい高さや握りにくい柵や、ベランダに踏み台になってしまうような物を置かない配慮が必要です。
浴室などの滑りやすいタイル上での転倒への配慮や、階段の勾配をゆるくしたり、段差を極力無くすバリアフリーの配慮が必要です。
温度差や段差などの配慮は住宅の計画で補うことができるので、今後も配慮しながら住宅のお手伝いを進めていこうと思っています。
コメント