【全館空調】採用しない人が多いのは費用の問題

住宅設備

住宅内の死亡者数は交通事故の4倍毎年発生しています。

その中でも住宅内で最も死亡者数が多い原因となっているヒートショックの対応策は、建物内の全ての場所で温度を一定に保つことになりますが、その一つの手段が「全館空調」です。

LDKや居室だけでなく、廊下や洗面脱衣室やトイレなど、いたるところに冷暖房の吹き出し口を設置して、住宅内の温度差がなくなり、温度を均一することでヒートショックを予防する効果が期待できます。

また夜から朝にかけての寒暖差や、季節の変わり目の急激な室温の変化などは、子どもがぜんそくを発症する要因のひとつと言われています。全館空調を導入して室温の変化を少なくすれば、ぜんそくが発症するリスクを軽減できると言われています。

そんなメリットの多い全館空調ですが、デメリットを含めて検討してみて、私個人的には予算が可能であればお勧めする理由をご紹介します。

全館空調を体験した感想

日本ではほとんど全館空調は普及していませんが、以前担当させていただいたモデルハウスで採用した際に、実際に全館空調の快適さを実感したことがあります。

モデルハウスの一室を常に事務所としていたため、一年中全館空調の建物で過ごしていましたが、早朝出勤しても建物全体が快適で、冬や夏にオープンな空間で建物を利用しても快適でした。

極端に夏はヒンヤリ涼しいとか、冬がポカポカ暖かといった感じではないのですが、春や秋の心地よさにような室温を気にしない暮らしになります。

全館空調の快適さは一度実感するとやめれない快適さがあります。

全館空調はコストの問題が一番大きい

欧米では主に全館空調が中心ですが、日本では局所冷房や暖房が中心で、昔から扇風機やコタツなどの文化から、全館空調は贅沢という概念がまだまだあると思います。確かに全館空調はそこそこ費用がかかり、建物の大きさやシステムによって変わりますが、150万円以上かかり、一般的な35坪程度だと200万円以上はかかります。

一般の壁掛けエアコンだどLDKと居室3室取り付けても機種によりますが、そこそこ良い機種を取り付けても50〜60万円程度で揃うことを考えると贅沢と言えます。全館空調はイニシャルコストで4倍近く費用がかかります。

贅沢と言えば贅沢な設備です。

またランニングコストも基本的には24時間稼働させるため、ランニングコストもかかります。ただ高気密高断熱の建物は普通の壁掛けエアコンでも必要な時間だけ使うよりも、長時間緩くエアコンを利用した方が快適に暮らすことができます。全館空調になるとエアコンをかける範囲が建物全体に空調をかけるのでどうしてもランニングコストがかかります。

またメンテナンス費用も全館空調は定期的にプロに見てもらう必要があったり、15年から20年程度使って最終的に交換する時期がきた時に、配管工事を除いた初期導入費用に近い費用がかかります。

お金の面では採用を躊躇する方が多いと思います。

ただ前回の動画でご紹介した通り、ヒートショックでの死亡率の高さや、心筋梗塞などで後々の障害が残る可能性を減らせる効果を考えたり、お子様の体調管理などを考えると、健康に対してどう考えるかで予算は変わってきます。予算が可能であれば採用を検討しても良い設備だと思います。

全館空調のデメリットの対策

全館空調を否定しているブログやYouTube動画も多く見かけます。

ダクトの中の汚れの問題や、匂いや音の問題や、局所で急激に暖冷房できない問題や、壊れると生活が急に不便になる問題や、冬乾燥しやすい問題や、コストの面などからデメリットを上げて否定している方が多いです。

そのようなデメリットもほとんどは結局お金の問題とも言えます。

ダクトの中を清潔に保つためには、できる限り常に稼働させて、定期的にメンテナンスをすることで解決できますが、それにはやはりお金がかかります。

匂いもメンテナンスや換気計画で解決できます。

音に関してはどこに全館空調を設置するかで変わりますが、できるだけ居室やLDKから離した場所に設置することで解決できます。私個人的にはそれほど気になるか同音ではありませんが、音に神経質な方は配慮した設計で解決できます。

局所に急激な暖房や冷房を効かせたい問題は、一般的な壁掛けのルームエアコンを予備に設置する方法があります。全館空調は公共建築やホテルなどでは当たり前に採用している、特に変わった設備ではないのですが、公共建築やホテルでも、急激に暖冷房を効かせたい場所にルームエアコンを採用している例も見かけます。特にホテルでは共用部分は全館空調で、個室はルームエアコンのホテルもあります。寝室のような場所は人それぞれ心地良さが変わるため確かにルームエアコンもありだと思います。それは夫婦でも温度感が違い、特に男性はエアコンでキンキンに冷やしてお布団に潜り込みたいという人もいると思います。ルームエアコンを併用すると万が一の故障でも対応できる良さがあります。ルームエアコンを居室に設置しないまででも、エアコンを後から追加で付けれるように計画段階で準備するのはありだと思います。

また乾燥しやすい問題は確かにあります。冬に暖房をつけたままにしておくと、部屋の湿度が下がって空気が乾燥してしまいます。実際の対策は家電製品の加湿器を使っていました。全館空調に加湿の機能があるタイプもありますが、効きはそれほどでもないので、家電製品の加湿器を併用していました。

また全館空調は暖かい風を緩く吹き出しているため、ポカポカまではなりにくいため、サーキュレーターや吹き抜けにファンを取り付けるのも有効です。

ランニングコストに関しては、基本的に全館空調を採用する場合は高機密高断熱の住まいでないとそもそもあまり機能せずランニングコストが高くなってしまうだけです。住宅を高機密高断熱化することでランニングコストを下げれます。また太陽光発電やエコキュートと併用してランニングコストを下げる方法もあります。また間取りの工夫で、できるだけ廊下を少なくすることで、あまり長く過ごしていない場所の空調を減らすことも考えれます。

逆に全館空調のメリットを生かした大空間や大きな吹き抜けも考えれます。全館空調の採用は間取りの検討も併用されることをお勧めします。

全館空調はコンクリートのマンションに近い快適さ

結局、全館空調は高気密高断熱や太陽光発電などを含めて、贅沢と言えば贅沢な設備です。快適性や健康に配慮して予算が可能であればお勧めの設備です。コンクリートのマンションで暮らしたことがある方は体感されている方が多いと思いますが、マンションは冬や夏に、自分の空間だけでなく、隣や上下の人たちも暖冷房するため、躯体のコンクリートが蓄熱され、夏や冬は比較的温度差がなく暮らせます。それに比べて、木造や鉄骨の集合住宅は、コンクリートのような蓄熱効果がないので、夏は暑く、冬は寒い場合が多いです。一般的な戸建住宅は木造住宅や鉄骨住宅が多く、暖房や冷房をすると、集合住宅のコンクリートのマンションとは違い、外の自然環境との温度差に対して空調を効かせるため戸建住宅の方が暖冷房効果が効きにくいと言えます。全館空調はコンクリートのマンションに近い温度差が少ない暮らしになり、建物内の温度差がないのは、本当に暮らしやすいです。私も何度か転勤などで移動しましたが、コンクリートの集合住宅で一度住むと、次の賃貸もコンクリートの物件で探すようになってしまうのと同じで、一旦全館空調を体験すると、自宅の新築を全館空調にしたくなると思います。ただ戸建住宅は完成した後で全館空調を設置しにくく、結局は採用しない方がほとんどですがほとんどイニシャルコスト・メンテナンスコストなどのコスト面です。

優先順位は高気密高断熱の住宅が予算的に優先され、更に予算が可能であれば健康に暮らせて快適な全館空調をお勧めします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました