【大工さんの収入は雇用形態で違う】社員大工・一人親方・工務店

住宅会社選び

私は鉄骨住宅の仕事もさせていただいたことがありますが、木造住宅の仕事の方が長くさせていただいています。大手ハウスメーカーの鉄骨系と木造系で働いたことがあり、その後、大工さんなどの職人さんを抱えている工務店で働き、現在はローコスト住宅会社で働いています。

さまざまな形態の住宅会社で働いてきた経験の中から、日本の住宅で一番多く建築されている木造住宅の中で、現場で一番長く作業さている大工さんの状況をご紹介します。

木造住宅といっても、大手ハウスメーカーとローコスト住宅会社を含めたビルダーと呼ばれている会社と職人さんを抱えている工務店さんで大工さんの雇用形態が違っています。

ハウスメーカーの大工さん

大手ハウスメーカーは下請けの工務店さんを基本使っている為、下請けの工務店さんの社員の大工さんか、下請けの工務店さんが外注している大工さんが作業します。現場監督も大手ハウスメーカーの現場監督と下請けの工務店さんの現場監督の二重で現場を管理しています。管理の面では二重に現場を管理するために大手ハウスメーカーの現場監督は多くの現場を抱えていても、下請けの工務店さんの現場監督に伝達して現場管理できます。二重に現場管理できるために失敗が起こりにくくなっています。私が大手ハウスメーカーで働いていたときは、更にエリア全体の現場の品質を上げるために、専門の現場の品質を管理するハウスメーカーの社員もいました。そのような体制で現場が進んでいくので品質が確保しやすいですが、そのぶん品質管理する社員や下請けの経費がかかるためコストはどうしても高くなってしまいます。大手ハウスメーカーでは細部の収まりが決まっていて、大工さんもやりやすい面があり、働いていた時は大工さんの品質に不満をもったことはありませんでした。

中堅住宅メーカー・ビルダー・ローコストメーカーの大工さん

最近多い形態として、現在私が働いているローコスト住宅の会社を含み、中堅のハウスメーカーやビルダーなどが採用している方式は一人親方と呼ばれる大工さんや、職人さんの集団で会社組織にされている会社の大工さんで工事していることが多いと思います。○○建築さんみたいな会社で棟梁が仕事の付き合いで職人さんの集団になっているようなイメージです。このケースのパターンでは現場の品質をあげるのは住宅会社が安定して受注することが一番大切です。安定して受注があると、大工さんも安心して仕事ができるので、常に仕事がある住宅会社にはいい大工さんが定着します。逆に仕事が途切れると、大工さんも仕事がない間に他の建築会社の仕事を請負い工事するようになります。また、全国展開している会社が、そのエリアで工事を進めるのに現地で職人さんを見つけますが、良い職人さんはすでにどちらかの住宅会社で仕事をしているために、新しく進出した会社に良い職人さんが回ってきにくくなってしまいます。新しいエリアで進出すると工事の品質が安定するのはどうしても数年かかります。住宅会社の現場監督よりも、現場監督をまとめている工事責任者の裁量が工事の品質に大きく影響します。私も住宅会社の店長を経験したことがありますが、地域の評判に一番直結する職人さんの確保を、営業の受注より力を入れて、工事責任者とよく相談していました。

工務店の大工さん

地域の工務店さんで多いのが社員の大工さんを抱えている工務店さんです。社員の大工さんということは、一人親方の大工さんと違い、安定した収入が得られ若い大工さんも生活の基盤の心配がなく安心して働けます。現場にくるお客様も大工さんに相談をしやすいというメリットがあります。変更があると現場の伝達が早い場合が多いです。しかし、実際のお金の管理までは大工さんはされていないので、個人的には変更がある場合は、職人さんに伝えるのではなく、お金の相談ができる営業や社長さんに真っ先に相談した方が後々揉めにくいとは思います。船頭さんがたくさんいると船がうまく進まないのと同じで、プロデューサーである社長さんや営業さんと相談して、総合的に判断される方がいいと思います。それでも社員の大工さんだとお客様の立場だと安心という面も多いと思います。しかし、工務店の経営側からの側面で見ると、コストを抑えるため外注ではなく社内の大工さんを安く使えるというメリットが大きいと思います。それだけに工務店さんの品質管理は大工さんの教育にかかっている面が大きいのも現状です。建築の技術は断熱性や耐震性など常に進化しています。その新しい技術に地域の工務店さんがどれだけ取り組んでいるかで変わってきます。それは古くからやっている工務店だからいいというわけではなく、古くからやっている信用はありますが、古い技術が継承されていないかのチェックが必要だと思います。しかし、なかなかお客様がその技術が正しいのか判断するのは難しいのが現状です。2020年に省エネ性能の義務化を予定していましたが、国土交通省は現場の技術が追いついていないための見送りました。大手ハウスメーカーは当然、最新の省エネ性能をクリアでき、意外と私が働いているようなローコスト住宅会社でもクリアできています。国土交通省が技術が追いついていないと判断しているのは多くの工務店さんの一部が現状です。高機密・高断熱に古くから取り組んでいる素晴らしい工務店さんもたくさんあると思いますが、高機密・高断熱は一歩間違えると結露しやすい建物になってしまうため、結露による木材の劣化や断熱材の性能の低下やシロアリの問題が起きてきます。正しい機密テープの貼り方や、筋交への断熱材の施工方法や手順など、正しく理解をして、正しく施工するのは実際は並大抵の現場管理能力では難しいため、お客様が判断するのは難しいのが現状です。自社の社員の大工さんへの教育は並大抵ではないのが現状です。私は工務店に2社勤めたことがありますが、一社は神社やお寺も請け負う工務店で社員の大工さんでした。もう一方はデザイン重視でコストを下げるために自社の社員の大工さんを使っていました。自社の社員の大工さんを使っている場合は、教育や細やかな現場チエックにどうしてもコストがかかります。中途半端な高機密高断熱の工事だとかえって構造材や断熱材に結露による悪影響を与えてしまいます。自社の社員の大工さんを使っている場合で、コストが安い住宅会社は注意する必要があります。また、大工さんを社員で雇うとコストが下げれるのが最大のメリットですが、今年のウッドショックのような木材が入らず工事が思い通りできない場合、社員の払う経費が増えるために経営に圧迫してしまうのも実情です。私も過去にリーマンショックなどの不景気を経験してきましたが、工事が止まるととことん工事が止まることが多いので、そうなるとお金が回らず倒産リスクが出てきてしまいます。私は社員の大工さんの使っている工務店で2社働いたことがあるとお伝えしましたが、そのうち1社は倒産してしまいました。 

大工さんの所得

大工さんの賃金の面からご紹介します。

社員の大工さんの場合は工務店さんが給料を払っているので会社員と同じです。ただ社員・大工で検索するとお分かりになると思いますが、給料としてはそんなに高くないのが現状です。一人親方と呼ばれる大工さんの方が稼いでるのが現状です。安定をとるか所得をとるかということになりますが、どちらかといえば大工さんも人手不足の状況なので、腕に自信のある大工さんは独立して一人親方で稼がれている方が多いのが現状です。

そこで大工さんのお支払いしている単価ですが、大工さんのお仕事内容で変わってきます。

一番単価が安いのが建売住宅で働いている大工さんです。建売住宅はあまり移動せずに、似たような間取りと似たような仕様で作るために作業も早くできるからです。建売住宅の場合、地域差などがあると思いますが、目安として大工さんの単価で1日2万円くらいが多いと思います。建売住宅は同じ間取り、同じ仕上がりで現場を進めていくので、工事期間も短い場合が多く、大工さんの工程は30坪前後が多いのと思います。一日2万円で1棟30日ですと一棟あたり60万円くらいが大工さんに対する支払いということになります。30日休みなく働くことは大変ですが、1ヶ月休みなく働くと60万円になるので、建築中の現場周辺で音の迷惑がかからないような場所だと、休日も大工さんが働いているのをよく見かけます。建売の大工さんは一棟30日くらいかかるので年間12棟が限界です。

次にローコストメーカーやビルダーなどの大工さんの短歌としては、会社の考え方や地域などによって違いますが、建売の一日あたりというのではなく1坪あたりという単価の設定が多いのが現状です。一般的に1つ日あたり2万円から3万円程度が多いと思います。仮に3万円だとすると、30坪の住宅をお任せすると一棟あたり90万円ということになります。ローコストメーカーのビルダーは最近の間取りの多様化で年間こなせるのは8棟くらいが限界だと思います。

こだわりの建物や造作をしている作っている大工さんは坪あたり6万円以上の単価がかかります。難易度でよって単価が変わります。手間隙がかかる仕事を根気よくされているので単価が高いのですが、年間4棟くらいが限界だと思います。

建売とこだわりのある建物を作る大工さんでは、1日あたりの単価は3倍近く違いますが、建売の大工さんが年間12棟が限界で、1日あたり2万円で年間720万円なのに対して、こだわりのある建物を作る大工さんは年間4棟が限界で、一日6万円だとしたら720万円くらいになるため、年間の棟数で考えると実は年収はさほど変わりません。建売の大工さんは数をこなし、こだわりのある大工さんは几帳面に根気よく作っていく作業と、同じ大工さんでもかなり仕事の内容が違っています。

ただ間違いなく減少しているのは坪あたり6万円以上で働いてくれるようなこだわった建物ができる大工さんで、お金の問題ではく絶対的に少なくなってます。高齢化や地域によってそのような大工さんはいない場合が多くなっています。

逆に社員の大工さんんも、昨今の景気の不安定さで、今後雇い続けるのが難しくなってくる可能性があります。同じ大工さんでも社員の大工さんで一人親方の大工さんのように720万円もらうのは少ないと思います。大工さんの求人で見ると300万円から500万円が多いです。その代わりに安定して仕事があるのが社員の大工さんだと思います。とはいっても工務店さんの経営は日本の人口減少で着工数が減ってきているので年々厳しくなってくると予測できます。

一口に大工さんといってもいろんな雇用形態や技術レベルや賃金が違う世界が大工さんの世界です。

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