日本銀行は2024年12月19日の金融政策決定会合で、利上げを見送ることを発表しました。
政策金利の無担保コール翌日物金利の誘導目標を0.25%程度で維持します。
この利上げ見送りの影響は、金利引き上げより、物価上昇を選んだと言えます。
金利据え置きの理由
2024年12月の金融政策決定では政策金利引上げを見送りました。
3会合連続の見送りになりました。
理由として挙げられていたのは2つで、日本銀行の植田総裁としては来年の賃上げの状況をもう少し確認したいということと、来年に控えたアメリカ・トランプ大統領の動向を見極めたいとの二つの理由を挙げていました。
発言のニュアンスとしては、「次の利上げの判断に至るには、もう1ノッチほしい」と発言され、ノッチとは企業の格付けなどでよく使われる段階と言えるような言葉で、1ノッチほしいというのは、植田総裁としては利上げを判断するには、来年の「春闘」での賃上げ状況や、アメリカ・トランプ新政権の影響について「もう少し情報が欲しい」というふうに捉えられ、利上げを急がない姿勢を示したといえます。
物価上昇率が急激に上振れする可能性は低く、低い金利で景気を下支えしながら、今後の利上げの時期を探るという判断となりました。
円安が進み物価は上がる
前日アメリカは金利引き下げを発表したので、日米の金利差は縮まったことで、円高でも良さそうですが、日本銀行の植田総裁が金利据え置きの発表以降、円安が進んでいます。
154円半ばだったのが157円程度まで円安になっています。
市場では、来年1月の会合でも利上げを見送る可能性が意識され、5か月ぶりの安値となっています。
次回の金融政策決定会合の1月まで円安傾向が続くことになりそうです。
つまり年末年始は円安傾向で、海外旅行に年末年始で出かける方や、食料や燃料は値上げに向かっていきそうです。今日からガソリンの補助が終わり、ガソリンの価格がリッターあたり5円上がっています。
昨日はガソリンの値上げ前でガソリンスタンドは強烈に並んで給油の順番を待っていましたが、円安が進むとさらにガソリン価格は上がりそうです。
金利引き上げか、物価上昇か
日本銀行としても、景気に対して金融政策でできることは、低金利を続ける代わりに円安による物価高をしかたないとするか、金利を上げることで個人や企業が借り入れしにくくしたり、返済が多くなるのを仕方ないとするかの、究極の二択を迫られています。
低金利を続けて物価高で景気を冷やすか、金利を上げて個人や企業の景気を冷やすかのどちらかで、どっちを選択しても苦難の道です。
今年は大きくは3回為替介入して、合計で22兆円を超える資金を投入して低金利を続けています。
年末年始で円安が止まらなければ、またそれなりのお金を投入して為替介入するかもしれません。
為替介入することで一旦為替は落ち着きますが、根本的な解決策ではないので、金融政策で円安を落ち着かせる時がくると思われます。
金利を上げたら上げたで、7月に金利を上げた後の株価上昇のような、新NISAを始めたばかりのような人にとっては、資産運用の目減りで混乱しかけません。トランプ氏がアメリカ大統領に来年就任してからの経済の変化も気になります。
アメリカ・欧州ともに円安
一番気になるのはヨーロッパの情勢で、イギリスの金利は現在4.75%ですが、アメリカが金利を昨日引き下げてもイギリスは引き下げを見送っています。
その影響でポンド円は194円程度だったのが、本日の日本銀行の発表で198円程度まで円安になっています。
アメリカも利下げのペースを落とすと発表されたので、アメリカと共に欧州に対しても円の価値が下がり、円安に向かいそうです。
本日の植田総裁の発言で市場では、来年1月の会合でも利上げを見送る可能性が意識され円安が進んでいるだけに、物価が上がり、買い控えが進んで景気後退しても、円の価値が更に弱まることで、もう1段階の円安が進み、物価が上がりそうです。
物価上昇に国民が耐えきれなくなった時に、アメリカや欧州との金利差を縮めて物価高騰を抑制させるので、その時は大きく金利を上げて対応していくことになるかもしれません。
症状が悪化しても現状維持という判断を下した今回の金融政策決定会合は、更に症状悪化した時に劇薬で症状を抑えることになるかもしれません。
ただ住宅ローンを借りている人にとっては変動金利を選択している人が多いため、もうしばらくは支払額の増加はなさそうです。
その分物価上昇で生活費が膨らんだり、将来の金利上昇に備えて、資金を蓄えておくことをお勧めします。
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